無いものは無い
先日、ある講演会に参加してきました。講師は成澤俊輔氏で、視覚障害があり、微かに光が感じられる程度で、全く見えない方でした。
自らがそういう障害を持ちながら、社会的弱者と呼ばれている方々(引きこもり、障がい者、ワーキングプア等の方々)に、就労支援をされている方です。
マシンガンのように話された講演の内容は山盛りで、“目から鱗が落ちる”という言葉を借りるならば、鱗がなくなるほど落ちまくってしまいましたが、その中の一つが「無いものは無い」という言葉でした。
「無いものは無い」という言葉は私も当然知っていますし、もちろん使ったこともありますが、私が使っている言葉の意味は、彼の使っているそれとは全く違う意味でした。
私がその言葉を使う時は開き直った感じで、無いものは無いんだからしょうがないと、あきらめる時であまり良い意味ではないような…。
でも彼の言葉は、あるもの中で良いものを探し、そしてそれを使っていこうというもの。
多くの場合障害者の仕事現場では、〇〇は出来ません。××は難しいので配慮してくださいと、出来ないことを挙げて出来る範囲で仕事をしているようで…。
ところが、例えば知的障害があり複雑な仕事は難しいとか、臨機応変に仕事を進めることは苦手という人が、単純作業でも一つの事を黙々とやり続けるのが得意だったので、その得意分野を活かした仕事に就いたことで、健常者では出来ない仕事をこなしているそうです。
細かい事にこだわりがあって周りの人と上手くいかず、ひきこもりになってしまった人が、印刷物の校正の仕事で、つい見逃してしまいそうな、図の僅かなズレや、文字のフォントの違い、微妙な色違いなど、簡単に気付いくことが出来るので他の人より仕事がはかどり、しかも、PCのデータや資料を送ってもらいながら、会社に行く必要がなく人と関わることもしなくて済むので、家で楽しく一人で仕事をしているそうです。
聴覚障害の人は、騒音が大きな工場で、騒音が気になって仕事に集中出来ない聞こえる人よりも、効率よく仕事に取り組むことが出来ているそうです。しかも、うるさくて上手く会話が出来ない場所であっても、手話でコミュニケーションを取りながら仕事を進めることが出来ます。
誰にでも出来ないことがあるし得意なこともあります。経営者側は、働く人の苦手なことが出来るようになるようにと、いろいろ考えてあげるのも必要でしょうが、苦手なことはしなくて済むように環境を整えることも必要です。
人と接することが苦手な人には、会社に来なくても家で出来る仕事を作るなど。
ところで、無くなってしまった鱗は元に戻るのでしょうか。心配です。
全盲の方の白杖が…
信じられない記事を目にしました。
歩道上の点字ブロックの上を白杖を持って歩いていた全盲の41才の男性と、20~30才代の男性がぶつかってしまったと。
白杖を持っていたということですので、通常は見えている若者がよけるべきでしょうが、他にも人がいたのでしょうから、気付かずにぶつかってしまうということはあるかもしれません。
ただ、その若者は…
「目が見えないのに一人で歩くな!」と言って、しかも足を蹴って立ち去ったということ。白杖は壊れて飛び散ってしまったそうです。
幸いその方にケガはなく、予備に持っていた折り畳み式の杖で目的地までは行けたそうですが、もし予備の杖がなければどうなっていたでしょうか。
壊れた杖は部品が飛び散ってしまったものを通りかかった方々が拾い集めてくれたそうです。
ぶつかった時にその若者はスマホを落としたそうで、ぶつかったはずみで落ちてしまったのならまだしも、歩きスマホで夢中になっていて白杖に気付かなかったとしたら大問題です。
本当のところは分からないようですが。
私は以前、東京駅中の雑踏の中で白杖で通路の床を大きな音をたてて叩きながら歩いている方に遭遇しました。
もの凄い勢いで叩いていたので確かにうるさい感じはあったのですが、でもそれくらいの音をたてていないと、視覚障害の彼が歩いていることに誰も気付かないほどの人込みです。
音が遠い間は何の音だか分からなかったのですが、段々と近づいてくると白杖ということに気付いて、周りの人達もサッと道をあけて通りやすくしていました。
彼は、ぶつかって迷惑をかけないようにわざと大きな音をたてていたのです。
見えている方がよけないと、ぶつかる前に、白杖で他人の足を叩いてしまうということも起こります。
決して「どけどけ、道をあけろ!」という意味ではありません。
そんな時に大きな声が響きました。
「うるさいぞ!!」
誰が誰に対して言った言葉かは分かりませんでした。でも彼は、自分に対して言われたことだと思ったのでしょう。
大きな音をたてるのを止めた彼は動けなくなりました。
音が無くなったので、彼の前にできていた道も無くなり、ヘタに杖を動かすと杖で他人の足を殴ってしまうことになります。
視覚障害サポートとして彼に近づいて声をかけようと思ったのですが、私より早くその行動にでて、彼を誘導してくれた方がいました。
視覚障害の方にとってなくてはならない白杖。(法律的にも見えない方が道路を歩く場合には、盲導犬を連れているか杖を持つことが義務化されています。)
それを壊した上で、謝ることもせずに、悪態をついて立ち去った若者をどうしても許せません。
補聴器をして自転車に乗っていた方に対して、イヤホンで音楽を聴きながら自転車に乗っているように見える。
紛らわしいので補聴器をはずしなさいと言った警察官がいると、SNSで問題になった出来事もありましたが、日本はまだまだ人に優しい社会ではないということを痛感しました。
義援金2
店のカウンターの上においてあるくまモン募金箱に、お金がある程度貯まっているようでしたので、開けて数えてみました。
7,875円入っていましたので、少しですが足して10,000円を熊本文化財復興支援金「熊本城復興分」として寄付したいと思います。
ご協力いただきました皆様にお礼を申し上げます。
耳かき
最近、お客様からよく聞かれることがあります。
「耳かきってやっちゃいけないんですか?」
「耳かきはやらないほうが良いって聞いたんですけど。」
耳鼻科医が様々なところで耳かきについて言っていることを、お客様はご存知のようです。
ただ、耳掃除はダメと言っている医者はほとんどいないと思います。
ですが、やり方には気をつける必要があります。耳かき棒でゴシゴシ、ガリガリと外耳道を強く掻くのは外耳炎を引き起こす可能性があります。綿棒のほうがやさしくて良いのですが、綿棒の挿入の仕方によっては、耳垢を鼓膜の方へ押しやることも多いようです。
耳垢は、通常は鼓膜側から外の方へ自動的に運ばれてきます。ですので、耳掃除は外耳道入り口から1cm位までをそっと外に向かってなでるくらいにして、決してそれ以上奥を掃除しようとしないでください。
それから、毎日耳掃除をするのは耳を傷つける恐れがあり、掃除する頻度としては月に1~2回で十分だそうです。
先日、イギリスで信じられないようなことが…。
耳掃除が原因で意識不明の重体に陥った方がいると。
使用した綿棒の綿が剥がれて外耳道の奥に残ってしまい、そこに細菌が増殖して脳にまで感染が広がったようです。
綿棒は、水や脂で湿っていると、綿が軸からはずれることがあるようで注意が必要です。
もしそのようなことが起こったら、すぐに耳鼻科で処置をしてもらってください。
先ほど、耳垢は自動的に外に向かって運ばれて…と書きましたが、中には運ばれてこないで奥に残ったままの方もいらっしゃいます。もしかしたら、綿棒で奥に押し込んだ結果かもしれませんが、とにかく奥に耳垢が多く溜まっている様子を時々見ることがあります。
そういう時は耳鼻科で掃除してもらうようにしてください。素人が無理して掃除するようなことがないように。
サイバスロン
先日、サイバスロン車いすレースを観戦してきました。
サイバスロン??聞いたことがないという方も多いと思います。
障害者の競技なのですが、パラリンピックの競技とは大きく違います。
サイバスロンはアシスト技術を使用して日常生活の課題をクリアしていく競技で、6つの種目に分かれています。
その中で先日川崎で行われたのは車いすシリーズ。海外3チームを含む8チームが参加。
チームは技術者とパイロットで構成されていて、技術者は大学や企業の研究者たちで、パイロットは電動車いすに乗り、それを操縦する障害者。
競うのは正確にクリアすることで、スピードはそれほど重要ではありません。(そうは言っても制限時間はあります)
スタートからゴールまでの距離は50~60mのコースに、
①テーブル
②スラローム
③凸凹道
④階段(6段)
⑤傾斜道
⑥ドア
クリアしなければならない6つの課題があります。
①は2つのテーブルの間入り90度方向を変えて、足が太もものあたりまでテーブルの下に入らなければなりません。
そこからまた元の方向に向きを変えて②へ進みますが、少しでもテーブルに触れるとクリアになりません。
テーブルの高さに合わせて車いすの高さを変えたり、狭い間隔に置かれた2つのテーブルの間で、
テーブルに触らず向きを変えるのは容易ではありません。
②のスラロームは、1.5m位の間隔でまっすぐに並んだ家具に、触れないようにしてジグザグに進みます。
簡単ではないのでしょうが、6つの課題の中では、難易度的には一番易しいように見えました。
歩道上の視覚障碍者のための点字ブロックが、車いすの方には通り難いという話もありますが、③の凸凹は点字ブロックの比ではありません。
バランスを崩さず前に進めるのが不思議なくらいです。
④はたぶん最難関な課題でしょう。
始まる前にコースの階段を見た時、絶対無理と思っていました。
⑤は斜めに傾いたまま直進しますが、倒れる車いすがなくてホッとしました。
⑥は危険ではないでしょうが、階段に匹敵するくらい難しそうに見えました。体でドアに触らず電動アームを使わなければなりません。ドアは手前に引くタイプですからドアに近づいていると開けることができません。ドアを開けたらそこを通り抜けますが、ドアを閉める必要もあり、ただ進むわけにいかず…。
もしかしたら、開けるより閉めるほうが難しいのかも。
周りに多くのスタッフが付いていて、もしもの時に備えていますが、スタッフが車いすに触れることは全くありませんでした。
スピードより正確性が重要といっても、パイロットは一刻も早くゴールすることを目指しています。健常者であれば急がなくても1分もあれば十分なコースを、早いチームでも4分以上かかっていました。
ただ、以前であれば車いすの方1人では絶対に無理だったことが、4分足らずで出来るようになりました。
車いすは、高さをある程度の範囲で変更することができ、車輪を格納してキャタピラを出してきたり、電動車いすというよりは、車いす型ロボットというべきでしょう。
各チームごとの車いすは全く違うもので、それぞれ得意、不得意の分野があるように見えました。
こういう競技を通して研究者が開発をさらに進め、その利用者が研究者では分からない意見を出すことにより、さらに便利に使用できるロボットとなっていくでしょう。
障害を持つ方々が、もっと楽に街に出て行けるようになるために、ハード面の開発では私は何の力もありませんので、研究者や使用者に委ねるしかありませんが、ソフト面では力になれるよう行動しなければと、その思いを強くした一日となりました。
大竹耕太郎今シーズン初勝利!
5月2日、ソフトバンクホークスの大竹投手が、今シーズン初勝利をあげました。彼は高校野球部の後輩です。
5試合目の先発で初勝利というと、今まで不甲斐ないピッチングで、やっと勝てたというイメージがありますが、そうではありません。
完投1も含め毎試合7回以上は投げています。合計37回1/3を投げて取られた点数は合計3点。防御率(9回投げた場合に何点取られるか)は0.72。5試合全てで勝利投手になっていてもおかしくありません。
ところが、投げている37回の間に、味方が取ってくれた点数もたった3点。
今年のホークス打線はあまり調子が良くないのですが、それでも1試合(9回)平均で3.8点はとっていますので、37回で計算すると16点は取っていても良いのですが…。
この調子で1年乗りきれるほどプロは甘くはないでしょうが、味方打線が普通に打ってくれれば、多少点を取られたとしても勝ち星は増えていくでしょう。
オールスターゲームに出るのも夢ではない成績ですので、それを楽しみに応援を続けたいと思います。
おかげさまで1周年
昨年の4月24日のこの店をオープンして、
今日で無事に1周年を迎えることができました。
本当にアッという間の1年でしたが、
いろいろなことがありました。
反省しなければならないことも少なくありません。
ですが、お客様に喜んでいただけた事も多く、
私自身の喜びもたくさんありました。
この店に関わっていただいた全ての皆様に感謝いたします。
ありがとうございました。
そして、これからも頑張っていきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
3Dスキャナーで耳型採取
先日、補聴器メーカーのセミナーに参加してきました。
セミナーの中身は大きな柱が2つあり、その一つが3Dレーザースキャナーでした。これは耳型採取の代わりに使用するものです。
補聴器関連では、耳あな型のオーダーメイド補聴器か耳かけ型のオーダーメイド耳せん(イヤモールド)を作製する時に耳型採取をしなければなりません。補聴器関連以外ではオーダーメイドイヤホンを作製する場合などにこの作業を行いますが、これが簡単な作業ではありません。
まず、耳型採取は誰でもやっていいのかというと、現在は耳鼻咽喉科学会から指針が出ており、認定補聴器技能者が行うようにとされています。
では、認定技能者であれば誰でも出来るのかというと、そう単純なものでもありません。
認定技能者は全員、耳型採取について一定の研修は行っています。ですがその研修だけでは全く不足しています。
もっと研修を積まなければ採取出来るようにはなりませんし、そしてその後も現場で採取する頻度が高いことが必要です。研修を積んだ時点で出来るようになったとしても、現場で採取することがあまりないような場合、だんだんと耳型採取の腕がおち、出来なくなってしまいます。
また、どんなに熟練した補聴器技能者であっても、鼓膜に傷があるようなお客様や、過去に耳の手術を受けたことのあるお客様に対しては、耳型採取を行ってはならないとされています。
もし、そのようなお客様で耳型採取が必要な場合は、補聴器相談医などの専門医で行うようにとされています。
ですが、その専門医であっても、そのようなお客様(患者)の耳型採取は出来ればやりたくないというのが本音のようです。
ここ10年前後の平均的な数字として、全国で年に40件程度の耳型採取での事故が起きています。スキャナーでも鼓膜損傷などが絶対起こらないというわけではないでしょうが、事故件数が激減して、安全に耳型情報が得られるようになるのは確実です。
この安全というのは非常に重要ですが、他にもメリットは多くあります。鼓膜に傷があったり、手術を経験している耳であっても、補聴器販売店で耳型データが得られます。
また、熟練の腕を持つ必要がなく、トレーニングさえ行えば誰でもが安全で上手にスキャンデータを取ることが出来ます。
それから時間短縮も。
耳型採取は一つの耳で2回行うことが必要でしたので、早くても15分くらいの時間が必要でしたが、それが3~4分で行えるようになります。
細かいことをいえばまだまだ…。
取ったデータは瞬時に補聴器メーカーで共有できます。
耳型は取ってから荷物として送ると、メーカーに届くまで最短でも1~2日は必要ですので、それだけ早く補聴器が出来上がることになりますし、輸送中に破損する心配もなくなります。
それから、これは販売店の都合ですが、荷物として耳型をメーカーに送る場合、千円弱の送料が発生してしまいますが、それも必要なくなるということになります。
他にもメリットはありますが、とにかく安全に早くデータを取ることができ、お客様の負担が格段に軽減しますので、待ち望まれていたシステムで、実はこれまでにもあることはありました。
ただ……
ものすごく大掛かりな機械であったり、扱いが難しいとか、そして、なにより高価すぎて補聴器販売店ではとても手が出ない、これまではそんな代物でしたが、今回のものは片手で取り扱いが出来て難しい技術も必要なく、価格的には高いですが、これぐらいはするよな~という感じで全く手が出ないというほどでもなくなりました。
ゲートキーパー養成研修
先日、市が主催するゲートキーパー養成研修会に参加してきました。
行ってみてビックリ!参加者の多いこと。少し遅く来た当日申込の方は入れなかったのかもしれません。
ゲートキーパーとは「いのちの門番」
悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聴いて必要な支援につなげ、見守る人のことです。
ゲートキーパーの方々が、年中無休で「いのちの電話」の対応をされています。
自殺の原因や動機として一番多いのは健康問題だそうで、そのなかでも一番多いのがうつ病の方。
その他の経済問題、生活問題、家庭問題、勤務問題などが原因となっている場合でも、最終的にはうつ的な精神状態に陥ると危険になってきます。
難聴が原因で他人との交流が少なくなり、うつの症状が出る方も少なくはないようですので、やはり難聴を放置しておくのはよくないと言えます。
また研修の中では“傾聴”に多くの時間を費やしました。
同じような講習を受けたことがありますしポイントは頭では分かっているつもりなのですが、本当に実践するのは簡単ではなく、仕事の現場でもそうすることが必要なのですが、出来てない時があるなあと反省しました。
最後に、ゲートキーパーを長年やっている方が質問に答えました。
ゲートキーパーをやるのに一番大切なことは?という質問に対して、まずは自身の健康管理だと。
自分が心身共に健康でないと務まることではないということ
身体が元気であるだけではなく、心も元気でないといけないというのは、私の仕事でも十分心しておかなければならないことだと思いました。
義援金
小金井補聴器に来店いただいた方はご存知でしょうが、店内のカウンターの上に「くまモン募金箱」があります。
そこに、補聴器電池が1パック売れる度に25円を入れています。
1パックの価格が250円ですので、その10%。
また、ご来店された方がご自分の財布から小銭を入れていただくこともあります。
先日、中のお金を数えてみたら3893円になっていました。
半端な金額ですので少し足し 4000円にして熊本地震の義援金として寄付しました。
少額ではありますが、何かの役に立てれば良いなあと思います。
ご協力いただいた皆様、電池をご購入いただきました皆様、ありがとうございました。
今後もしばらくは続けていきたいと思っています。