電話リレーサービス
先日、店の電話の呼び出し音が鳴ったので、
受話器を取って
「小金井補聴器でございます。」
と電話に出ると、先方はかしこまった声で、
「日本財団の…」
手話を第一言語にしている当店のお客様が、
次回来店の予約を入れるために、
電話リレーサービスを使って連絡をしてこられたのでした。
電話で音声での会話をすることが難しい方が、
テレビ電話でオペレーターに手話で用件を伝え、
オペレーターはその用件を聞こえる相手に電話で伝え、
相手の言った内容は、テレビ電話を通して
オペレーターが手話で聞こえない方に伝える。
聞こえない方は、手話ではなく、
文字で伝えることを選択することも出来ます。
私は、電話リレーサービスを普及させるための活動の中で、
何度もそれについての説明を聞いていましたので、
頭の中では十分に理解しているつもりでしたが、
初めてそこからの電話を取った時には
「エっ…⁈」と少し固まってしまいました。
固まったといっても、おそらく0.1~0.2秒位だと思いますすし、
オペレーターが電話リレーサービスの説明を始めようとした時に、
分かっているので説明は必要ない旨を伝えましたが、
何も知らずに電話を取った方は少し驚くと思います。
もっともっとこれについて、
いろいろな場所でPRされていき、
誰もが知っている制度になれば良いなあ…
新型コロナウイルスと難聴の関連性
新型コロナウイルスが世界中で問題視されるようになってから、
約1年が経過ました。
その間に、これを治療するための薬や、
予防するためのワクチン等の開発が進んできましたが、
その他にも様々な研究が続けられてきたようで、
新型コロナウイルスと難聴の関連性も
少しずつ分かってきたことがあります。
まず、この感染症の症状として特徴的なものに、
呼吸困難と血中酸素濃度の低下があるようですが、
内耳が正常に機能するには多くの酸素を消費しますので、
この症状が出ると内耳の機能が弱まってしまい、
それが聞こえにくさにつながる場合があるということ。
また、これはまだハッキリしていないようですが、
ウイルスの中には内耳を損傷させてしまうものが多くあり、
新型コロナウイルスも同様に内耳に悪影響を与える可能性があるそうです。
それから、感染した時の治療薬ですが、
一般的に使用されている治療薬の中には、
耳毒性のあるものがいくつかあるようです。
その代表的なものとしてはレムデシビル。
一般の方でも聞いたことのある治療薬だと思います。
もちろん、感染したからといって、
多くの方が難聴になるというわけではありませんが、
そういう危険性があるということも頭に入れて、
感染しない・させないために、
一人ひとりが徹底的な対策を!
鼓膜再生
勉強不足で最近まで知りませんでした。
数年前に、もうすぐこんなことが可能になるという
そんな話は聞いていましたが、
もうそれが現実となっていました。
鼓膜に穴が開いているいわゆる鼓膜穿孔は、
軽い場合は自然と閉じることも多いようですが、
ある程度進行してしまうと、
これまでの治療方法は手術しかありませんでした。
ところが、今は…。
鼓膜の再生を促す薬を使って、
数回の通院治療で穴が塞がり、
聴力も改善させることが出来るように。
鼓膜穿孔の方全員にとって、
この薬の効果が得られるわけではないようですが、
10年(あるいはそれ以上)くらい前に病院で、
治療することが出来なかった鼓膜穿孔も、
現在では治療できるケースも増えているので、
あきらめずに再度病院を受診してみるのが良いようです。
聴覚情報処理障害③
昨年3月と前回のこのコーナーで聴覚情報処理障害(APD)について書きましたが、
読売新聞にこの障害についての記事Vol.2が掲載されていました。
SN比を大きく改善させることは、
補聴器のみではできません。
ワイヤレスマイクシステムが必要で、
難聴がない方でも補聴器を
受信機として使用することができます。
例えば学校の教室で先生が話す時、
先生から2mの距離の最前列で聞いた時と、
先生が口元から25cmの胸元に
マイクをつけた時の聞こえを比較すると、
距離が半分になると6dB大きく聞こえるので、
2mの半分の半分の半分の距離では、
最前列の生徒より18dB大きな声が耳に届き、
つまりSN比が18dBも改善することになります。
SN比がそれだけ改善できれば、
APDの方でも聞き取りはずいぶん楽になるはずです。
現在はどの補聴器メーカーでも
マイクシステムを取り入れていますので、
最近の補聴器であれば一部の超小型補聴器を除き、
ほとんどの補聴器でこのシステムを
活用することが可能となっています。
また、この送受信機を購入する場合に、
多くの自治体で中等度難聴児発達支援事業での
補助を受けることができるようになってきていますので、
役所へ問い合わせてみると良いと思います。
聴覚情報処理障害②
昨年3月のこのコーナーで聴覚情報処理障害(APD)について少し書きましたが、
読売新聞にこの障害についての記事が掲載されていました。
補聴器を使用中のお客様にも
この症状の方がいらっしゃいますし、
難聴ではない方の中にも
この症状でお困りの方がいらっしゃいます。
ほとんどの方は静かな場所では会話するのにそれほど困らないが、
周りが騒がしくなると、聞きたい声が聞こえていても、
聞き取ることが難しくなってきます。
『SN比』という言葉をご存じでしょうか。
「S:signal」と「 N:noise」の「比」です。
簡単に言うと聞きたい声の音量に対して、
それを邪魔する雑音がどれくらいあるかということです。
例えば会話している相手の声の大きさが65dBSPLだったとします。
ごく普通の部屋であれば、静かに感じるとしても50dBSPL程度の雑音があり、
その場合、SN比=65-50=15dBとなります。
部屋の中の雑音が大きくなって60dBSPLとなると、
話し手の声の大きさが同じであればSN比は5dBとなります。
若い方で聞こえの障害を持っていない方であれば、
SN比5dBは、何の問題もなく
聞き取ることが可能です。
若い方であればSN比ー2dBでも
聞き取ることが可能かもしれません。
ですが、APDの方は
SN比5dBの環境で聞き取ることは…。
では、SN比を改善するには
どうしたら良いでしょうか。
次回はそのあたりのご紹介をしたいと思います。
耳鳴り改善
NHKの有名なテレビ番組で、
「耳鳴り」を取り上げていました。
耳鳴りの悩みが解消するということでしたので、
(耳鳴りが解消するということではありません)
興味を持って見ていましたが、特に真新しいことは何も…。
ただ、一般の方でご存知の方は多くはないようですので、
参考程度にお読みいただければと思います。
耳鳴りは気にすればするほど悪化していきます。
気にすると気になってしまい、大きくなったように感じ、
大きく感じてしまうと余計に気なってしまうという悪循環。
ただ、簡単に「気にしないように。」と言っても…。
これは番組内で言っていたことで、
私も知らなかったのですが。
耳鳴りの悩みで病院を受診された方が、
医師に言われてガッカリしてしまうというか、
最も言われたくないことのベスト3が。
第3位「歳だから仕方ないよ」
第2位「そのうち慣れるよ」
第1位「気にしないようにしなさい」
気にしないように出来るんだったら
こんな所(病院)になんか来ないよ!
一番大変なのは眠りにつく時。
周りはシーンと静まりかえり耳鳴りだけが。
そうなると耳鳴りが気になって気になって、
熟睡することなどできるはずもなく。
ところが、番組から提供された音を聞きながら寝てみると、
朝までグッスリ眠れたそうです。
そうやって眠れるようになると耳鳴りを気にしなくなり、
気にしなくなると気にならなくなるという好循環。
決しても耳鳴りが治ったわけではないのですが、
少し前までは暗かった表情がみるみる晴れやかに。
寝る時に使用する音源は、枕元ではなく足元のほうに置き、
スピーカーを壁に向かせて、
部屋全体が音に包まれるようにするのが良いそうです。
ただ、注意も必要です。
どんな音をどんな音量で聞くかが大切で、
間違ってしまうと耳鳴りを悪化させてしまうことも。
今回使用された音は滝の音。
自然に聞き流せて、意識に残らないという意味で、
自然環境音がお勧めされているそうです。
しかし、波の音のように音の大きさが変化するような音は
耳鳴りの苦痛が取れにくく適しておらず、
滝の音の他は、川のせせらぎや木の葉のこすれ合う音などが
お勧めされているようです
適切な音量にするということも重要で、
耳鳴りはかすかに聞こえつつ、
苦痛を感じなくなる程度の音量にすることが
お勧めされています。
ただし、難聴をお持ちの方は特に音量には注意が必要で、
必ず専門家の指示を受けるようにしてください。
難聴の方は、そういう音源(サウンドジェネレーター)を
兼ね備えている補聴器もいろいろとあります。
ただ、サウンドジェネレーターの機能を使用する場合には、
医師の処方が必要となりますので、
それを補聴器店で勝手に調整することは許されません。
スマートホン難聴
先日、スマートホン難聴について
あるテレビ番組で取り上げられていました。
スマートホン難聴そのものについては、
以前から言われていることで、
改めて注意を呼び掛けるものでしたが、
一つ、そういう見方もあるんだ…と。
下のグラフは日本での難聴者率で、
難聴またはおそらく難聴だと思っている人の
年齢代別の割合を表わしています。
一般的には年齢が高くなればなるほど
難聴者率も高くなるはずで、
15~24歳の難聴者率は、
14歳以下の0.6%よりは高くなりますが、
25~34歳の2.8%よりは低くなるはずです。
ところが15~24歳のそれは、
35~44歳のそれと同程度に高くなっています。
つまり、今の若者は20歳上の方と同じ難聴者率
そうなると今の若者が年齢を重ねていった場合は…。
あくまでも可能性としてですが、下のグラフのようになることもあると。
そうすると、55~64歳の方々の40%が難聴に。
スマホや携帯音楽プレイヤーを使って、
イヤホンやヘッドホンで音楽を聴く場合、
平均で100dB弱位の音量で聴いているそうです。
この大音量で聴くことが出来るということ自体が、
すでに難聴が始まっていることを示しています。
そうでなければその大音量は、
うるさすぎて我慢できないはずです。
うるさいのを我慢して聴くとしても
その音量で聴いてもいい音楽は
一週間で10曲程度ということになります。
音量が100dBになると、せいぜい5~6曲。
この難聴は徐々に進行していくので
本人はなかなか気付かないようですが、
気付いた時にはもう手遅れということも。
そんなことにならなければ良いのですが。
聴覚過敏
聴覚過敏用イヤーマフ聴覚過敏という言葉をご存知でしょうか。
これは病名ではなく、聴覚過敏症ともいわれる症状のことで、感覚過敏症の中の一つです。
大抵の人が普通に聞いていられるような音でも、大きな苦痛を伴うほどに大きく聞こえてしまう。
音が耳をつき刺すように感じる。頭の中で大きく反響して聞こえるなど。
-
掃除機やドライヤーの音
-
サイレンや電話の呼び出し音
-
赤ちゃんや子供の甲高い声
-
食器のぶつかる音やナイフと皿の接触音
それから、我慢できないほどではないとしても、雑踏の中で会話しようとした場合、聞きたい声が周りの音にかき消されてしまい、聞き取ることができなかったりします。
原因として考えられるものがいくつかあります。
顔面神経麻痺などで、耳小骨の働きが悪化し、大きな音を抑制して聞くという働きがなくなる。
突発性難聴やメニエール病などの内耳性難聴で補充現象が起こり、音が少し大きくなっただけで、異常に大きく割れて響いて聞こえる。
また、てんかんや偏頭痛を持っている方、発達障害の方などは、聴覚過敏の症状が出る方が多いようです。
うつ病や抑うつ状態、ストレスなどの心因性、そのようなことが原因となることもあるそうですが、原因不明の場合も多いようです。
治療法はまだ確立されていませんが、聴覚過敏となる疾患がある場合には、まずその疾患を治療することとなり、疾患により受診する診療科は違います。
周りの音がうるさくて気になる場合、耳栓やイヤーマフをするのも効果はあるようですが、常時使用していると症状を悪化させることがあるようで、一時的に使用するというくらいにするべきだそうです。
会議や人の話しを聞かなければならないような時で、耳栓やイヤーマフを使用しなければならない場合、その場にいる方に理解してもらう必要があるのでしょうが、聴覚過敏に対する理解は進んではいないようです。
体調などにより症状の重さも違ってきますので、ある時にあまり問題ではなかった音も、別な時には我慢出来ない音に感じてしまう。
また、難聴の方でも聴覚過敏の方はいますので、ある大きさまでの声は聞こえないのに、それより少し大きな声を出すと、うるさいというような表情をされてしまうこともあります。
少し我慢していればその内に慣れるという、そういうものではありませんので、周りの方の理解は不可欠となります。
音響外傷
選挙先週の日曜日、参議院議員選挙の投票日で、その前日までは選挙戦で賑やかな日が続いていました。
街頭演説で手話通訳を付ける政党や候補者がありますが、選挙戦最終日のある政党の街頭演説で、私が手話通訳を担当しました。
選挙カーの上に乗って演説するのではなく、選挙カーは車道に停車させておいて、広い歩道の一番車道寄りに演者が台に立って、その横で通訳を行ったのですが、想定外のことが起こってしまいました。
マイクを使って話せる時間は決まっていますので、リハーサルはありません。
さあ始めますと言われて所定の位置に立った私に合わせて、司会担当の方が第一声を上げました。そんなに大きな声を出さなくても…という声で。
もっと早く気付くべきでした。
車道に停まっている選挙カーのスピーカーが、私の頭のすぐ後ろにありました。
司会者の第一声を聞いた瞬間に頭の中を殴られた感じがして大きな耳鳴りが始まり、話している方の声はガンガン響くばかりで、何を話されているか聞き取ることが出来ません。音響外傷の症状です。
騒音性難聴は、うるさい職場で何の対策も講じずに長年勤務したことで大きな音を聞き続けたり、イヤホンやヘッドホンで大き目の音量の音楽を、長時間毎日のように長期間聞き続けるなどが原因で、難聴になってしまうことをいいます。
それに対して音響外傷とは、短時間あるは一瞬でも強大音を聞いてしまったことで起こります。
ロックコンサートの会場で、巨大スピーカーの前で大音量をあびてしまったり、間近で風によってドアがすごい勢いで閉まった音などで聞こえ難くなることです。
幸い私の症状は2~3日で改善しましたが、次にこのような機会があった時には、最初にスピーカー位置の確認を忘れないようにします。