筆談ホステス
ご存知の方も多いと思いますが、ちょうど10年前に出版された本で、その翌年にはテレビドラマ化された「筆談ホステス」というノンフィクションがあります。
著者は斎藤りえ(里恵)さんで、ご自身の生き様を書かれたものです。
ドラマでは北川景子さんが斎藤さんの役をやっていました。
斎藤さんは銀座のクラブなどでお仕事をされた後、2015年から東京都北区の区議会議員をされています。
先日、その斎藤さんの講演会に参加してきました。
ドラマで話題になっていたころは手話はされていなかったようですが、最近は手話も習得されてきています。
ただ、言いたいことを手話で流暢に表現することはまだ難しいようで、講演は斎藤さんが声を出して話すという方法でした。
ですが、1歳で聴力を失った斎藤さんの声はしっかり聞き取れるほど明瞭ではありません。
あらかじめ原稿をパワーポイントで作成し、スクリーンに映しながら講演が進められました。
参加者は、講師の表情や動きを見ながら、スクリーンの文字を目で追って内容を理解しました。
議会の中では他の議員の発言は音声認識文字通訳で、タブレットに表れる文字を見て理解し、自分の発言は、音声読み上げソフトを使用して、パソコンに打ち込んだ文字を読み上げる機能を利用して、他の方々に伝えているようです。
選挙の時には音声でも手話でも自分の考えを人に伝えるということが出来ませんでしたので、駅前などで演説することが出来ず、文字で訴えようとしても、選挙活動でビラを配ることは禁止されており、途方に暮れることもあったようです。
しかし、区民一人ひとりと筆談で語り合いながら、自分の意見を理解してもらうことで、当選を勝ち取ることが出来たそうです。
障害を持つ当事者が議会に加わることで、区民にとってやさしい議会になっているのでは?と思っています。
もう数ヶ月で次の選挙が待っているはずです。
次も立候補されるのかどうかは聞いていませんが、今後もご活躍されることを期待しています。
差別解消条例(東京都)
6月26日のこの欄で、障害者差別解消法について少しだけ触れました。
と言っても、触れたかどうだか分からない程度でしたが。
差別2016年4月1日に施行されたのが国の法律で『 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 』長いので障害者差別解消と呼ばれています。
この法律には大きな柱が2つあって、それは
①不当な差別的取扱いの禁止
②合理的配慮の提供
①は行政機関や事業所、お店などで禁止されています。
例えば、車いすの方の参加をお断りするとか、耳が聞こえないことを理由にアパートを貸さない、盲導犬を連れた目の不自由な方の入店を断るなど、そういうことはしてはいけませんということです。
②は行政機関など公的な場所では義務としていますが、一般の事業所や店では義務ではなく、できるだけ努力しなさいということになっています。
例えば公的な場所では、階段など段差がある場合はエレベーターやスロープを設けるのが望ましいのですが、費用面等でその設置が難しいとしても、車いすの方がいらっしゃった場合は、職員が対応して誘導することや、聞こえない方の受付業務を行うために手話通訳者を常駐させることは難しくても、筆談するための器具をそろえておくなど、そういうことが求められています。
先日ご紹介しました遠隔手話通訳を利用するところが増えているのも、差別解消法が大きく関係しています。
ただ、民間事業者は努力義務になっているだけで、“やりなさい”ということにはなっていません。
そこが東京都の条例と違います。
「障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例」今年の10月1日に施行された東京都の差別解消条例です。
この条例では、不当な差別的取扱いの禁止については国の法律と同じですが、合理的配慮の提供については国の法律と違い、行政機関だけではなく、民間事業者にも義務としています。
一般のお店や会社でも、差別をしなければいいということではなく、“配慮をしないことは差別をしているのと同じ”という考えを持つ必要があります。
パンフレットやリーフレットなど詳細は、下記の東京都福祉保健局のホームページで確認することができます。
≪東京都福祉保健局のホームページはこちら≫
電話リレーサービス
皆さんは電話リレーサービスをご存知でしょうか?
耳の不自由な方が電話をかける場合に、手話や文字を中継所で音声にして電話相手に伝えてくれるものです。
もちろん電話相手の声は手話や文字に換えて伝えてもらえます。
日本では2011年に始まったサービスで、徐々に広まってきてはいますが、まだ、いつでも誰でもが使えるサービスではありません。
主要先進国では、日本が一番遅れているといえるでしょう。
多くの国では公的なインフラの一部として整備されているので24時間対応です。
日本では、夜間の対応はできていません。また現在は、使用できるのは、事前に登録をしている方に限られます。
予算の問題が大きいのでしょうが、それが確保できたとしても、手話通訳者の数が足りないという問題もあります。
それでも、少しずつ便利になっているのは事実で、このサ-ビスで様々な問い合わせを行ったり、電話でできる手続きであれば、このサービスを使って行うことができますし、何かを注文したり、レストランの予約なども可能です。
ただ、時々電話先の相手から(保険会社やカード会社など)「今電話されているのは○○様ご本人ですか?」と聞かれることがあります。
このような時にリレーの担当者は、「私は手話通訳者です。」と答えますので、そうすると、「ご本人でなければお話しすることはできません」と必要な手続きをやってもらえない場合もあります。
公的なインフラとして整備され、このシステムが広く認知されるようになり、このサービスが信頼されるようになれば、こんな問題もなくなってくるのではないでしょうか。
また、本来はそのような使い方は想定されていなかったのでしょうが、山や海で遭難された方がこのシステムを利用して救助を依頼し、命が助かったということも起こっています。
そんな使い方は、しなくて良いのであればそれが一番良いのですが、『いつでも誰でも…』が早く実現することを願っています。
サイレントK引退
プロ野球のペナントレースもあと数試合を残すだけで、順位は確定し、個人成績のタイトルもほぼ…。
不振だったチームの監督の交代もいくつか出てきていますし、ベテラン選手の引退もけっこう早い時期から話題になっています。
その引退する選手の中にはサイレントKと呼ばれている石井裕也投手の名前もあります。
左耳は全く聞こえず、かすかに聞こえる右耳に補聴器をしていますが、会話を聞き取るのは難しいそうです。
口形で話の内容を理解できる場合もあるようですが、分からないことも多かったと思います。
ピッチャーですので投球自体にはハンデはあまり無いとは思います。
特にランナーがいない場合には、投げるということだけであればそれほど問題ないでしょう。
ですが、ランナーがいる時の投球や、連係プレーになると聞こえないハンデは非常に大きいと思います。
声を出すことや声を聞いて判断することが重要だからです。
プロである以上、聞こえないから仕方ないでは…。
そんな世界の中で13年間も選手を続けて、ドラゴンズ、ベイスターズ、ファイターズと3球団を渡り歩きながら、300試合以上も登板してきたのは素晴らしいことです。
試合以外でも、チームメイトや監督・コーチとのコミュニケーションは、やっと慣れた頃に移籍するということが続いたのではないでしょうか。
石井投手のようになりたいと思っている難聴の子供たちはきっと大勢いるでしょう。
今後どのような道に進まれるのか私はまだ知りませんが、これからも陰ながら応援させていただきたいと思っています。
第22回全国聴覚言語障害者福祉研究集会
10月20日~21日の二日間、第22回全国聴覚言語障害者福祉研究集会が開かれます。
この大会は毎年開かれていますが、関東で2回開催すると、次の2回は関西で開催するということを繰り返していますので、東京ではおおむね4年に1回開催するということになり、今年は私の地元の小金井市にある学芸大学で行われます。
小金井の聴覚障害者協会や手話サークルに要員としての協力依頼がきていますので、私も20日は参加協力したいと思っています。(21日は仕事があり、残念ながら…)
この集会では、ろう重複児・者、高齢聴覚障害者の問題や支援について考えていきます。
参加費が二日で5000円(一日でも同金額)とやや高い気もしますが、都合のつく方はぜひ参加してみてください。
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